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フリーランスが知っておくべきインボイス制度について解説

令和5年10月よりインボイス制度が始まります。

制度開始時にインボイス発行事業者となるためには、原則として令和5年3月31日令和5年9月30日に延期)までにインボイス発行事業者の登録が必要です。

インボイス制度の開始にともない、フリーランスが知っておくべきことについて解説しますので、ぜひご覧ください。

 

インボイス制度とは

課税事業者(取引相手)から求められたとき、インボイス(適格請求書)の交付をおこなわなければなりません。

インボイスの交付がおこなわれなかった場合、課税事業者は仕入税額控除を受けられなくなります。仕入税額控除の対象となるためには、課税事業者は交付されたインボイスの写しを保存しておく必要があるからです。

そのため、課税事業者からインボイスの交付が求められたとき、インボイスに登録していないなどの理由で、その求めに応じることができない事業者は、取引から排除される可能性も懸念されます。

なお、インボイス制度について詳しく知りたい人は、国税庁にてオンライン、税務署などにて開催していますので、そちらに参加するのもよいでしょう。

 

参考:インボイス制度の説明会(国税庁)

インボイス(適格請求書)とは

現行の区分記載請求書に、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などの記載が追加されたものです。

区分記載請求書とは、2019年10月1日、消費税が10%に増税された際に、消費税8%となる軽減税率制度が実施されました。

具体的には、酒類・外食を除く飲食料品、週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)が軽減税率の対象となります。

こうして、消費税10%のものと8%のものが混在するため、区分経理に対応した帳簿および請求書等の保存が必要となっていました。

2023年10月1日からは区分記載請求書などに代わり、適格請求書等の保存が必要となります。

課税事業者と免税事業者とは

課税事業者は消費税の納付義務のある事業者のことを言います。

反対に、免税事業者とは、消費税の納付義務が免除されている法人や個人事業主のことを言います。

 

・課税事業者

課税事業者の対象は、法人であれば資本金が1000万円以上であること、個人事業主と法人であれば課税売上高が1,000万円以上であることです。

資本金が1000万円以上の場合、初年度から課税事業者として消費税を納付する必要があります。

一方、課税売上高が1,000万円以上に達した場合、消費税課税事業者届出(基準期間用)の申請が必要になります。申請の2年後から消費税の納付義務が発生します。

また、税務署に消費税課税事業者選択届出を提出した場合も、消費税の納付義務が発生します。

 

・免税事業者

資本金が1000万円未満であれば、事業開始から2年間は免税事業者となります。課税売上高が1,000万円未満であれば、免税事業者として続けられます。

2023年10月よりインボイス制度が始まります。インボイス制度により影響があるのは、免税事業者と言われています。取引先からインボイスの発行を求められたとき、発行することができないためです。インボイスが発行できなければ、取引先は仕入税額控除を受けられず、取引先の負担は増えることになるからです。

2023年からのインボイス制度による変更点

2023年10月よりインボイス制度がスタートします。インボイス制度により実際に何が変わるのか見ていきます。

消費税仕入税額控除

消費税仕入税額控除とは、売上にかかった消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引いて(控除して)、実際に支払う消費税を求めることができる制度です。これまでは従来の請求書の保存により控除を受けることができましたが、インボイス制度が始まると交付されたインボイス保存が必要になります。

請求書等保存方式

事業者が仕入れをおこなった際に、仕入れ先から請求書を発行してもらい、保存しておくことで、支払うべき消費税の一部の控除(消費税仕入税額控除)が受けられることが消費税法に定められています。2019年10月より軽減税率制度が実施されたことで、その対象者は区分記載請求書の保存が必要となりました。2023年からは、区分記載請求書保存方式は終了し、代わりに適格請求書等保存方式が採用されることになります。

適格請求書の免除

売手であるインボイス発行事業者は、適格請求書の交付が困難な以下の取引の場合、交付が免除され、買手である事業者は従来どおり帳簿のみの保存で消費税仕入税額控除を受けられるケースについて説明します。

 

・売手(インボイス発行事業者)……交付の免除

①公共機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送

(3万円未満のものに限ります)

② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡

 (出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)

③生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡、 (無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります)

④自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等

 (3万円未満のものに限ります。)

⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス

(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

・買手……帳簿のみの保存で消費税仕入税額控除を受けられる

①上記①④⑤に掲げる取引

②適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引

③古物営業、質屋または宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物または建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引

④適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品を棚卸資産として購入する取引

⑤従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当などに係る課税仕入れ

 

参考:適格請求書等保存方式の概要 ーインボイス制度の理解のためにー(国税庁)

フリーランスが受けるインボイス制度の影響

インボイス制度がフリーランスに与える影響について解説します。

経理作業が増える

売手の場合と買手の場合についてそれぞれ見ていきます。

売手(インボイス発行事業者)の場合

売手であるインボイス発行事業者としては、従来の請求書に登録番号、適用税率および税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要になります。

買手(課税事業者の場合)の場合

課税事業者になることで、買手としての義務が発生します。

 

・本則課税制度

免税事業者から、課税事業者になることで、消費税の納付義務が発生した場合、買手として消費税を意識した経理作業が発生します。

消費税の計算の仕方には、本則課税と簡易課税があります。

本則課税を選んだ場合、売上の消費税から仕入れの消費税を差し引いた額によって計算します。そのため、これまで経費として計上していたレシートや外注費として計上していた請求書を取り出し、どの売上に対応しているのか、紐づけて管理する必要があります。

 

・簡易課税制度(課税売上高5000万円以下で選択可能)

売上の大きくない個人事業主などのために、簡易課税制度があります。消費税簡易課税制度選択届出をすることで利用可能です。

この制度を利用すれば、仕入などの消費税を簡易的におこなえます。業種ごとに異なるみなし仕入率(※下記の表を参照)によって計算します。

計算式は、売上の消費税にみなし仕入率、消費税率を乗算した値です。この値が納税すべき消費税になります。

 

事業区分該当する事業みなし仕入率
第一種事業卸売業90%
第二種事業小売業、農林魚業(飲食料)80%
第三種事業製造業、農林水産業(飲食料品除く)等70%
第四種事業その他事業(飲食店業等)60%
第五種事業サービス業等50%
第六種事業不動産業40%

 

(例)該当する事業はサービス業で、課税売上が3000万円だった場合の納税すべき消費税は?

30,000,000×(1-0.5)×0.1=1,500,000円(※消費税を10%として計算しています)

150万円が消費税ということになります。

 

参考:インボイス制度が始まります!(国税庁)

 

・消費税の納付

翌年3月31日までに消費税の確定申告をおこない納付をする必要があります。

このように、通常の確定申告に加えて、経理作業が増えます。

売り上げが下がる可能性がある

インボイス制度が始まり、免税事業者を続けた場合(下請け事業のケース)と、インボイス制度を期に課税事業者(インボイス発行事業者)となった場合についてそれぞれ見ていきます。

・免税事業者を続けた場合(下請け事業のケース)

取引先から仕入税額控除が受けられなくなることを理由に、取引から除外される可能性が出てきます。

その対処として、インボイス制度開始から6年間は、経過措置が取られます。免税事業者からの仕入れについては、従来どおり仕入税額控除が受けられるというものです。ただし、インボイス制度開始から3年間は80%の控除が可能、さらに3年間は50%の控除が可能、それ以降は控除不可となっており、インボイス制度開始から100%の控除が可能な課税事業者と比較して不利といえます。このため、受注量が減少し、売上が下がる可能性があります。

 

参考:インボイス制度実施に当たっての経過措置について

 

・課税事業者(インボイス発行事業者)になった場合

課税事業者になると、消費税の支払い義務が発生します。これまで消費税の売上を全額売上にできていたものが、仕入れにかかった消費税を控除した金額を納税する必要が出てきます。

 

いずれの場合も売上が下がる可能性があります。

納税額が増える可能性がある

課税事業者となった場合、消費税の支払い義務が発生します。これまで確定申告をおこない納税していた分に加えて、消費税の支払いが加算されます。通常の確定申告は課税売上高によっては、法人税、事業税などを支払わなくて済む場合もあります。ですが、消費税の場合、消費税について個別に計算するため、納税しなければならない、というケースも出てきます。

取り引きをしてもらえなくなる可能性がある

免税事業者は仕入税額控除が受けられなくなることから、取り引きをしてもらえなくなる可能性が出てきます。それについて、免税事業者に対して仕入税額控除を受けられるようにするという経過措置を取るとされていますが、100%の控除ではない上に、段階的に控除不可となります。

取引先にとっては、実質、下請けの消費税を肩代わりすることになるため、やはり、取り引きを断られる可能性は消えません。

課税事業者の場合適格請求書発行をしなければならない

請求書は、現行の区分記載請求書に、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載された請求書(適格請求書)を発行しなければなりません。

インボイス制度によるフリーランスの収入の変化

インボイス制度が始まることで収入に対する影響を見ていきます。

課税事業者

インボイス制度が始まることを期に課税事業者となった場合、消費税の納付が発生します。仮に簡易課税制度を利用した場合について考えてみます。

消費税は、売上の消費税にみなし仕入率、消費税率を乗算して求められます。

例えば、サービス業をおこなっていて、900万円の課税売上があった場合、45万円の消費税を支払う必要があります。

それまで免税事業として消費税を支払っていなかった場合と比較して、45万円ほど収入が下がることになります。

免税事業者

一方、免税事業者は消費税の納付義務がないため、収入に影響がないように見えます。しかしながら、仕入税額控除を受けられなくなることを理由に、取引先から取り引きをしてもらえなくなる可能性が出てきます。仮に消費税を請求しないことで取り引きを続けた場合について考えてみます。

税込み900万円の課税売上があった場合、消費税を請求しなければ課税売上は8,181,818円となります。つまり、818,182円ほど収入が下がることになります。

インボイス制度のためにフリーランスが準備すべきこと

インボイス制度は2023年10月より開始します。そのためにフリーランスが準備すべきことについて解説します。

適格請求書(インボイス)の発行

課税事業者の場合、インボイスを発行するために、インボイス発行事業者の登録をおこなう必要があります。

 

参考:申請手続(国税庁)

 

登録を受けると国税庁適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号、氏名または名称などの情報が公表されます。

会計ソフトを見直す

インボイス制度が始まると、適格請求書発行と保存の必要が出てきます。条件としてインボイス発行事業者かそうでないかなどの判別も必要となるため、インボイス制度に対応した会計ソフトに見直す必要があるでしょう。

適格請求書の書き方を学ぶ

従来の請求書に①登録番号、②適用税率、③税率ごとに区分した消費税額を追加した請求書(適格請求書)を作成する必要があります。以下、書き方のサンプルになります。

請求書
取引先:株式会社〇〇請求者:△△
①登録番号:××
日付品名金額
10/3食品A30000円
10/5非食品A40000円
10/11非食品B50000円
※軽減税率対象
②8%対象:30000円③消費税:2400円
②10%対象:90000円③消費税:9000円

新しい請求書のフォーマットを準備する

インボイス制度が始まれば、これまでの見積書や請求書のフォーマットは使用できなくなります。上記のような新しいフォーマットを準備してください。

フリーランスの方々は制度を理解し、インボイス制度の導入に向けて準備しよう

インボイス制度は2023年10月より開始します。

開始時にインボイス発行事業者となるには2023年3月31日(2023年9月30日に延期)までに登録申請の必要があります。

それまでにインボイス制度について理解を深め、免税事業であればこのまま免税事業者を続けるのか、それとも課税事業者となり、インボイス発行事業者となるのかを決める必要があるでしょう。

この記事を参考に、インボイス制度開始に備え適切な準備を進めてみてください。

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