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フリーランスの労働基準法って?労働者との違いをわかりやすく解説

フリーランスになって仕事をしている方でも、労働基準法などの労働に関する法律知識を持っている方は少ないのではないでしょうか? また、労働基準法がそもそもフリーランスに関係のある法律なのかわからない方もいらっしゃると思います。

この記事では、労働基準法や労働に関する法律について解説をしています。フリーランスの働き方について再認識できるような内容になっていますので、ぜひとも最後までご一読ください。

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そもそも「労働基準法」とは?

労働基準法とは、1947年(昭和22年)に制定された、労働の条件に関する最低基準を定めている法律のことです。労働に関する法律は労働基準法以外にも「労働組合法」「労働関係調整法」というものがあり、3つの法律を合わせて「労働三法」と呼称されています。

労働三法は、労働者の権利の保護や労働条件の向上が主な目的となっており、それぞれで定められている内容が異なります。

 

労働三法

・労働基準法……労働契約や賃金、労働時間、休日、有給休暇、災害補償などの労働条件の最低基準を定めている法律・労働組合法……労働者が労働組合をつくり、会社と対等に交渉できることなどを保証した法律・労働関係調整法……労働者と雇用主の間で起こった争いごとの予防や解決を目的とした法律

また、労働基準法では、労働者のことを以下のように定義づけています。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(労働基準法第9条)

以上を踏まえ、労働基準法をまとめると、「職業の種類を問わず、事業または事務所に使役されて給与を得ている労働者の権利の保護、労働条件の向上を目的とした法律」になるかと思います。(ただし、個人の家庭から指示を受けて家事をする「家事使用人」や、同居の親族のみで事業運営をしている事業や事業所で働く方は労働者になりません)

加えて、「事業又は事務所に使用される者」には雇用条件のいかんは関係ありませんので、会社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パートなどの事業に従事して賃金を得ている方のことを指します。

フリーランスと労働者の違い

フリーランスと労働者の違いを、働き方を中心にお伝えします。

フリーランスの働き方

フリーランスについての説明をしたあとに、フリーランスの業務形態をお伝えします。

 

【フリーランスとは】

フリーランスとは、「企業や組織に所属せずに自分の事業を営んでいる方」を指す言葉です。基本的には、開業届を税務署に提出し、個人事業主として働いている方をフリーランスと呼称することが多くなっています。(個人で事業を営んでいる方は開業届の提出義務がありますが、罰則規定はありません。そのため、開業届を提出していないフリーランスの方もいらっしゃいます)

しかし、企業に所属しながら(雇用されながら)副業として事業運営をしている会社員やアルバイトなどをフリーランスと扱っている政府や民間の調査資料も存在します。そのため、「フリーランス」という言葉は、おおよその定義や概念はあるものですが、使われる文脈によって対象が拡がったり狭くなったりすると認識しておきましょう。

 

関連記事:フリーランスは開業届を出すべき?提出方法やメリットデメリットを解説

     フリーランスと個人事業主の違いとは?開業届の有無やメリットデメリットについて解説

 

【フリーランスの業務形態】

フリーランスの仕事は「事業運営をしているフリーランス」と「事業運営をしている企業や事業所など」との取引となり、業務委託(委任や請負)の契約を結んで報酬を得ています。そのため、仕事の発注側と受注側という関係性はありますが、あくまで両者は対等な関係となります。

また、金銭の受け取りに関しては、労務の対償として支払われる「賃金」や「給料」という名称は用いられず、「契約金」「前払金」「〇〇料」などといった名目でフリーランスは相手方に金銭を請求し、それらの料金を「報酬」として受け取るかたちとなります。

加えて、業務委託では、発注者側が働く場所や時間などを定めてはならないという決まりがあります。仮に発注者が時間と場所を指定した場合、「偽装請負」とみなされ罰せられる可能性もあるのです。また、労働力の提供を目的として、発注者側の企業でフリーランスが働くこともありますが、フリーランスが結ぶ契約には発注者側に指揮命令権を認めるものがありません。

関連記事:フリーランスと業務委託の違いとは?契約時の注意点もわかりやすくご紹介

労働者の働き方

労働者として働く場合、企業や事業所などと雇用契約を結ぶことになります。雇用契約を結ぶということは、就業時間や就業する場所、業務内容、賃金規定、法定外残業などについて双方が合意することになり、労働に関する法律(労働法)が適用されることを意味します。

雇用契約を結んだ以上、労働者は就業規則を守る必要があり、企業側は労働者に対する指揮命令権を持つことになります。そのため、労働者は企業の指示に従う必要がありますが、業務をおこなうことで雇用契約で約束した賃金を得ることができるというわけです。

フリーランスに比べると、労働者側は企業からの制限が多くなります。しかし、雇用契約に準じた労働条件で働くことが可能になり、労働基準法などの法律で保護される立場になることができます。

フリーランスは労働基準法の適用外

フリーランスは「自分で事業を営んでいる方」を指しますので、企業や事業所などに雇用されていません。そのため、労働基準法で定められた労働者に該当せず、労働者のための法律である、労働基準法は適用されなくなっています。

労働時間の制限

労働基準法では、「1日8時間以上・週40時間以上の労働の禁止」「6〜8時間の労働で最低45分、8時間の労働で1時間の休憩」「毎週1日の休日か4週間で4日以上の休日」など、労働時間に関する決まりがあります。企業側は、これらの規定以上に労働者に働いてもらう場合、労働基準法第36条に定められた協定である「36協定(読み:サブロク協定)」を結ぶ必要があります。

労働者の労働時間については以上のような制限がありますが、フリーランスは労働者ではないため労働時間についての制限がなく、残業手当や休日出勤手当などもありません。

働く場所の拘束

フリーランスが企業や事業所と契約をする「委任契約」「準委任契約」「請負契約」では、依頼者側が働く場所を指定してはいけなくなっています。雇用されている労働者の場合、雇用契約で勤務地を指定する旨の内容が盛り込まれていることが一般的なので、フリーランスと労働者はその点が異なります。

業務の進め方に対する指揮命令

フリーランスが結ぶ契約では、依頼者側に指揮命令権や勤怠管理の権利がありません。依頼者がフリーランス側に業務や勤怠の仕方を指示した場合、雇用契約をしていないにも関わらず雇用契約のような実態があるとみなされ、偽装請負として処罰される可能性があります。

福利厚生の適用

福利厚生には、「法定福利厚生」という制度があり、企業や事業所は厚生年金や健康保険、雇用保険、労災保険などの社会保険に加入しなくてはなりません。また、労働者に適用される社会保険の費用を雇用主側が支払う必要もあり、その点において労働者は法律的に保護される立場であるといえます。

しかし、フリーランスは労働者ではないため、労働法で定められている社会保険の制度が適用されません。フリーランスが年金や健康保険に加入する際はその保険料の全額をフリーランス自身が支払うことになり、雇用保険は適用外、労災保険も「特別加入」していない限り適用されません。

労働基準法適用外のフリーランスの注意点

フリーランスが仕事をするうえでの注意点を2つお伝えします。

労働時間が無制限になりがち

フリーランスには労働時間を制限する法律がないため、1日8時間以上働いたり、休日を取らずに働いても法律上の問題はありません。また、依頼主から急なお願いをされることもありますが、フリーランスは他の仕事があったとしても新規契約に応じるか否かを自分で決めることができます。

仕事を獲得したいフリーランスは、労働時間や休日などを考慮せずに依頼を受けることが多く、気がつけば毎日仕事をしているような状態になりがちです。仕事がたくさんある状態は、見方によっては良い状態であるともいえますが、その結果として心身に不調をきたすケースも珍しくありません。労働者は労働基準法があるため最低限の労働条件は保つことができますが、フリーランスは自分自身で働き方を適切に管理・調整しなくてはなりません。

報酬の未払い

「発注者の金銭がなくなってしまった」「成果物の品質が悪い」「依頼していた仕事が不要になったので契約自体を取り消しする」などの理由で、報酬を支払わないように働きかけてくる依頼者がいます。フリーランスに過失がなく、依頼者から一方的な契約の解除を打診された場合、自身での交渉や弁護士などに相談をして報酬をもらえるように動くことができますが、報酬未払いのまま泣き寝入りしているフリーランスの方も多くいらっしゃるようです。

雇用契約では、契約書に金銭の支払いに関する内容を必ず記載しなければなりませんが、フリーランスは口約束だけで仕事の契約をすることができます。そのため、契約書が存在せず、報酬未払いに陥っても契約を立証することが難しくなるケースがあるのです。

契約を反故にしようとする依頼者に非があることは明らかですが、口約束でも契約は成立してしまうため、契約書を作成していないフリーランスにも落ち度があると判断することもできてしまいます。業務を受注する際は、契約書を作成するようにしましょう。

フリーランスでも労働基準法が適用されることも

フリーランスでも、業務の内容から「労働者性」が認められ、労働基準法が適用されることがあります。労働者性とは、「仕事の許諾に関する自由の有無」「指揮監督、拘束性、代替性、事業者性の有無」「専属性の程度」などから判断されるもので、これらの状態が労働者に近い状態であるとみなされた場合、フリーランスであっても実質的な労働者であると認められることがあります。

フリーランスの働き方に労働者性が認められた場合、依頼者は労働基準法や最低賃金法に準拠した賃金の支払い、有給休暇などの付与をしなくてはなりません。労働者性については、厚生労働省が過去の裁判例を用いて詳細に解説している資料がありますので、気になった方は下記出典をご確認ください。

 

出典:「労働者」について|厚生労働省

フリーランスとしてやるべきこと  

フリーランスとしてやるべきことを3つお伝えします。

労働時間を管理する

フリーランスは自分の裁量でどこまででも働けてしまうため、仕事ばかりの生活になってしまうことがよくあります。昨今では、仕事と生活が調和したバランスを意味する「ワークライフバランス」や、柔軟な働き方の選択を推奨する「働き方改革」などの言葉が浸透してきており、仕事に関する価値観が変化してきています。個人の考えによるところが大きいとは思いますが、自由に働くことができるフリーランスだからこそ、労働時間を適切に管理するよう心がけ、無理のない範囲で生活を送るようにしましょう。

契約書の作成・確認をする

フリーランスになると、契約書がないために発生してしまうトラブルが起こり得ます。そのため、契約を結ぶ際は契約書を必ず作成するように意識しましょう。また、契約内容をしっかりと確認し、契約の形態や契約期間、業務内容、支払い方法など、トラブルを未然に防ぐものかどうかも見るようにしてください。契約書については、関連記事で詳細にまとめています。どういった契約書が好ましいのかわからない方は、ぜひとも確認してみてください。

 

関連記事:フリーランスが結ぶ契約とは?契約書締結の流れや注意点を解説

独占禁止法や下請法に関する知識を身につける

令和3年3月26日に内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を定め、フリーランスと依頼主の関係や問題行動、法令の適用範囲などを明確にしました。

このガイドラインでは、独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法上で問題となる行為を類型的に示しており、依頼者からの要望の良し悪しについての判断基準が示されています。

 

 

出典:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版

 

上記出典で記載されている行為類型は、フリーランスであれば身に覚えのある内容もあるかと思います。依頼主の問題行動について知識を得ることで、万が一の場合に備えることができ、契約内容を確認する際の判断基準にもなりますので、ぜひとも確認してみてください。

 

出典:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン

  

フリーランスにもセーフティーネットの動向がある

「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の策定に加え、近年では労災保険の特別加入の範囲を広げたり、フリーランスでも加入できる労働組合を作る動きが出てきています。政府としても、上記ガイドラインに加え「副業・兼業の促進に関するガイドライン」というものも策定しており、働き方の多様化に向けた整備をおこなっている状況です。

具体的に、今後どのような法律が制定されるかはわかりかねますが、フリーランスを守るためのセーフティーネットは徐々に広がりを見せていますので、最新情報をチェックするようにしましょう。

 

関連記事:フリーランスでも労災保険に加入できる?労災保険の特別加入を徹底解説

     フリーランスでも組合に加入できる!労働組合のメリットとできることを解説

出典:副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省

まとめ

フリーランスには労働基準法が原則として適用されません。しかし、フリーランスの働き方に労働者性が認められた場合は法律の適用対象となり、フリーランスが実質的な労働者とならないようにするための決まりも存在します。

「フリーランスだから労働基準法は関係ない」と考えるのではなく、この記事でご紹介をした内容や政府のガイドラインを参考にして、「依頼主の要望や自分の状況が法律に違反していないか」「契約書の内容は適切であるか」などを確認するようにしましょう。

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