PHPのフレームワークと聞いた際に、CakePHPとLaravelを思い浮かべる方は少なくないと思います。そこでこの記事では、それぞれの特徴から両者を比べ、フレームワークとしての違いを説明しています。
また、PHPについてPythonと比較をして説明している記事もありますので、PHPについてあまり詳しくない方は、よろしければこちらもご参考ください。
関連記事:PHPとPythonの違いとは?特徴や習得難易度について解説
Contents
CakePHPの概要
2005年にリリースされたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークです。CakePHPはRubyのRuby on Railsに影響されたフレームワークとなっており、『設定より規約』(CoC|Convention over Configuration)という設計思想を持っています。
『設定より規約』の設計思想を持っているフレームワークは、規約がしっかりと定められているため、ルールに沿った方法であれば高速でシステム開発ができるという強みを持っています。しかしながら、開発のルールが厳しくなっており、自由度や拡張性が低いというデメリットもあります。
それ以外のCakePHPの特徴としては、ケーキを焼くように簡単に開発ができる、対話型インターフェースでファイルの自動作成などをおこなう『bake機能』や、Model(モデル)、View(ビュー)、Controller(コントローラー)という役割ごとにプログラムを管理するMVCモデル(MVCアーキテクチャともいう)という概念を採用しているため、役割ごとの分業開発がしやすいなどといったものがあります。
CakePHPが利用されているサービスには、スキルマーケットのココナラ、ネットショップ作成サービスのBASE、クラウドファンディングサービスのCAMPFIREなどを挙げることができます。
また、CakePHPについてまとめている記事がありますので、よろしければこちらもご確認ください。
関連記事:CakePHPとは?フレームワークの特徴や開発できるシステムについて
Laravelの概要
2011年にリリースされたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークです。同じPHPのフレームワークであるSymphonyをもとにして開発され、『Web職人のためのフレームワーク』というキャッチフレーズが公式サイトで使われています。
LaravelはCakePHPと同じく、MVCモデルを採用したフルスタックのフレームワークになっています。そのため、Laravelを利用するだけで基本的にはシステム開発ができるようになっており、豊富な機能を持っていながら自由度が高くなっているため、柔軟な開発が可能です。
なかでもLaravelには、Artisan(アルチザン|職人)というCLI(コマンドラインインターフェース)があり、Artisanのコマンドを利用すれば設定ファイルの作成や、モデルの生成などを簡単におこなうことができます。また、Artisanで用意されているコマンド以外でも、独自のカスタムコマンドを作ることができるようになっています。
Laravelは機能が豊富でありながら、CakePHPのような開発上の縛りが少なくなっているため、エンジニアの思うように開発がしやすい、大規模案件にも対応しやすい、という特徴があります。しかしながら、自由度が高いことによってコードの統一性が保ちにくくなり、管理が大変になってしまう可能性があります。また、LaravelはCakePHPよりも処理速度が遅くなっています。
Laravelが利用されているサービスには、グルメサイトのぐるなび、人材管理ツールのカオナビ、DMM GAMESが手がけるオンラインゲームなどを挙げることができます。
CakePHPとLaravelは何が違う?
まずはCakePHPの規約についてお伝えし、Laravelとの違いをお伝えします。
CakePHPは規約ベース
上述したように、CakePHPは『設定より規約』の設計思想を持っているフレームワークです。そのため、CakePHPを利用した開発をする際は、まず最初に規約をしっかりと覚える必要があります。
CakePHP はフレームワークのコンセプトとして、MVCモデルの、モデル、ビュー、コントローラーに関する規約、モデルと関連付けるデータベースの規約、ファイルとクラス名の規約、プラグインの規約を定めています。
たとえば、コントローラーのクラス名(命名規則)は複数形のパスカルケースで、最後にControllerが付くようになっています。
※パスカルケース(アッパーキャメル記法ともいう)は、プログラミングなどで英語の複合語やフレーズ文をつなげて表記する際に、文頭の語と構成語の先頭を大文字にする方式のこと。
【例】
ArticleCategoriesController
・Article=パスカルケースで表記する際は、文頭の語が大文字になるため大文字で記載。
・Categories=パスカルケースで表記する際の、構成語の先頭のため『C』は大文字で記載し、複数形の規約があるためCategoryではなく、Categoriesで記載。
・Controller=最後にControllerを入れる規約があるため記載。
他にもたくさんの規約があり、規約から外れたことをしてしまうとエラーが発生し、処理をしてくれない可能性がでてきます。また、CakePHPはコーディングにも規約を設けており、IDEの設定やインデント、コードの行の長さなども定めています。
コーディング規約 – 4.x – CakePHP Cookbook
Laravelは拡張性が高い
CakePHPと違い、Laravelは規約が少なくなっています。たとえば、CakePHPで説明したコントローラーの命名規則では複数形にする必要がありますが、Laravelは複数形でも、単数形でも命名することができます。
・CakePHPでのコントローラーの命名規則……パスカルケース+複数形+Controller
・Laravelでのコントローラーの命名規則……パスカルケース+単数形or複数形+Controller
また、CakePHPと違いLaravelはコーディングの規約がありませんので、エンジニアは自由に開発ができるようになっています。そのため、プログラミングによる機能追加などがしやすくなっており、ディレクトリ構成も自由に設定することができるため、Laravelは拡張性が高いフレームワークであると評価されています。
近年はLaravelが人気
世界の主要な業界における、市場調査や消費者動向に関係する統計やデータを提供しているドイツ企業のStatista(スタティスタ)社では、世界中の開発者に最も使われているWebフレームワークのデータを公開しています。(2022年7月発表、データのなかにはライブラリやCMSなども含まれています)
こちらのデータではLaravelが12位に含まれていますが、CakePHPはランクインしていません。また、Googleの検索数を比較することができる、Googleトレンドでの検索数は、世界では2014年頃から、日本では2016年頃からCakePHPとLaravelの検索数が逆転しています。
Googleトレンドでの検索数を比較(全世界)
Googleトレンドでの検索数を比較(日本)
PHPのなかで、LaravelだけがStatista社のランキングに載っている点やGoogleトレンドの結果から、Laravelの人気が高くなっていることがわかります。また、近年ではCakePHPからLaravelにシステム移行をしている企業も見受けられます。
CakePHPとLaravelはどちらを学べばいいか
エンジニアとして仕事の獲得を目指す場合はLaravelをおすすめします。また、双方とも日本語の公式ドキュメントやインターネット上に情報が豊富にあるため、学習しやすい環境は整っています。
- 人気度・案件数ではLaravel一択
フレームワークの人気度や案件数から見ると、これからPHPのフレームワークを覚える方はLaravelを選択するべきだといえるでしょう。弊社TechReachの案件数では、Laravelの276件に対しCakePHPは29件しかありません。(2022年9月現在)
業界全体を見てもLaravelのほうが求人数が多くなっているため、『仕事を探す』という観点から考えると、CakePHPを新しく覚える必要性は薄いともいえます。
CakePHPはコードの質が安定しやすい
CakePHPは規約がしっかりと定められているため素早い開発が可能であり、コードの質が安定しやすく、開発チームのなかに初学者がいてもすぐに対応ができる、といったメリットがあります。
また、CakePHPは規約が多いために機能拡張などがしにくくなっているので、大規模な開発にはあまり向いておらず小・中規模の開発に向いているフレームワークです。これらの理由から、そのような状況下にあるスタートアップや中小企業にとって、CakePHPはメリットがあるフレームワークだといえるでしょう。
まとめ
今回の記事では、主に『規約』の観点からCakePHPとLaravelの違いを説明してきました。PHPのトレンドはLaravelになっているため、PHPを扱うエンジニア個人としては、 Laravelを覚えておいた方が有利になることは間違いないかと思います。
しかしながら、企業の状況や開発するシステムによっては、CakePHPを選択するメリットが勝るケースもあるかと思いますので、両者の違いを比較検討して、フレームワークを選択していきましょう。
また、PHPのフレームワークについてまとめている記事もありますので、よければこちらもご参考ください。この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
関連記事:PHP言語のフレームワークはこの5つを押さえよう【2022年版】
フリーランスの案件をお探しの方はTechReachにご相談ください。
TechReachを運営する株式会社アールストーンはIT・Web業界特化で15年以上の実績がございます。
そのため、高単価・高品質な数多くの案件紹介が可能です。
また一人のコンサルタントが企業と求職者様の担当を行う「両面型エージェント」を採用しているため、あなたの希望に合う案件がきっと見つかるはずです。
TechReachを活用して、理想の案件を見つけましょう!